家が古くなり、家族構成が変化して不都合が出てくると、リノベーションをするか建て替えるか選択をすることになります。選択する上でどんなことが基準になるのか、3つのポイントをご紹介します。
*リフォームとリノベーションの違いについて
リフォームとリノベーションは似ていますが実は少し意味が違います。リフォームは「回復」が基本で、古くなったり汚れたりしたものを、マイナスの状態から元の状態(ゼロ)に戻すことを指します。一方リノベーションは、ゼロを基準にせず、既存の状態を改善させてプラスの価値を与える意味合いがあります。
古くなった家を数十年前の新築の状態に“戻したい”、という方はあまりいないので、今回は大型リフォームではなく「リノベーション」という言葉を使用してご説明します。
建て替えをするためには、既存の住宅を取り壊し、更地にして土地の整備を行い、新しい家を建てるので当然数千万円はかかります。予算が一千万円以下しかどうしても出せない、という場合には建て替えは難しいでしょう。必然的にリノベーションという選択になります。
仮に800万円ほど予算があれば、内装・外装や古い設備の交換など、目に見える部分はかなり補修できるでしょう。築年数が15年未満の状態で、家族構成や暮らし、好みの変化で住環境を整え直したい、という方には十分なリノベーションができます。
数十年前に建てられた家と今私たちが建てている新築住宅の決定的な違いは、実は見た目ではなく、表には見えない「耐震性能」と「断熱性能」です。住宅の壁の中の性能はここ20年の間に劇的に変化しています。
住宅の耐震性能と断熱性能は、1995年の阪神淡路大震災後、2004年の新潟県中越地震後、そして2016年の熊本地震後と、ここ20年間で大きな地震がある度に向上を繰り返してきました。
20年前以上前に建てられた家の場合、「耐震性能」と「断熱性能」が十分とは言えません。安全に住まうためには性能の修繕も欠かせませんが、そこまでの修繕をするとなると1000万円以上のコストが掛かってしまい、その上新築ほどの高性能にするのは難しいです。さらに新築のような耐久性を確保することも難しいです。
「あと何年その場所で暮らしたいですか?」20年、30年後もその場所で生活をするのであれば、1000万円以上かけて古い住宅を延命させるよりも、建て替えをしたほうが将来的なコストを抑えられます。
以前当社にお越しになったお客様で、お子様が学校に通う十数年間だけ、特定の学区内で中古住宅をリノベーションして暮らしたい、という方がいらっしゃいました。その方はお子様が学校を卒業されたら別の場所に家を新築すると仰っていました。そこまで計画的に将来の住まいを考えられているなら、一時的に暮らすためのリノベーションもありだと思います。
工務店業をしていると、たまにものすごく歴史的に価値のある住宅に巡り合えることがあります。もともと日本古来の建築工法で建てられた木造住宅は耐久性が非常に優れており、築100年以上でも現役で使われている古民家が稀にあります。
そういった家は耐久性だけでなく断熱の面でも昔の人の知恵で工夫されていますが、それでも現代の住宅の断熱性能には劣るので冬はとても寒かったりします。
家づくりに携わるものとして、暖かい家で暮らすことの快適さや健康への影響は十分認識していますが、それでも耐久性に優れた古民家はいつまでも現役で残り続けて欲しいと願ってしまいます。ジレンマですね。
一方、リノベーションしてまで住み続ける価値を感じられない住宅もあります。それは、築40年~50年ぐらいの高度経済成長期に建てられた量産型の住宅です。経済の向上に比例し、大量生産できる工業製品ばかりを使用し、細い柱や鉄筋の入っていな基礎がたくさん普及しました。シックハウス症候群が問題視されたのもこの量産型住宅が原因です。
そういった住宅はリノベーションをしてもその先長く暮らすのは無理がありますし、住む人にとって本当に幸せな住環境とは言いにくいです。
私たちベストホームは住む人の健康や快適性を考え、自然素材や天然木を厳選し、さらに耐震性や断熱性にもこだわって新築の家づくりを行っています。だからこそ、化学物質を使用した古い量産型住宅のリノベーションは今まで積極的に行ってきませんでした。
しかし、おかげ様で現在のベストホームのスタイルになってから二十数年が経過し、そろそろ私たちがこだわりをもって建てさせて頂いた住宅も、修繕が必要な時期に差し掛かってきました。
これからは、私たちを信じ家づくりを任せてくださった数十年前からのお客様を中心に、後世に残す価値のある住宅のリノベーションに取り組んでいこうと考えています。